2026.09.20

運転資金はいくら必要?月商だけでは判断できない理由を税理士が解説

運転資金はいくら必要?月商だけでは判断できない理由を税理士が解説

運転資金はいくら必要?月商だけでは判断できない理由を税理士が解説

「運転資金として、いくらお金を用意しておけばいいの?」

「月商の2か月分あれば大丈夫と聞いたけれど、本当にうちの会社もそれでいいの?」

「売上は増えているのに、なぜか会社のお金が減っている……」

中小企業の経営者にとって、運転資金がいくら必要なのかは分かりにくい問題です。

高松市・三木町・さぬき市など香川県内の中小企業でも、資金繰りについて考えるときに「月商○か月分」という考え方を耳にすることがあります。

たしかに、月商を基準に運転資金を考えることは、一つの目安になります。

しかし、運転資金を月商だけで判断するのは適切ではありません。

同じ月商1,000万円の会社でも、

  • 売上がいつ入金されるのか

  • 仕入や外注費をいつ支払うのか

  • 在庫をどれくらい持っているのか

  • 人件費や家賃などの固定費はいくらなのか

  • 借入金を毎月いくら返済しているのか

  • 売上が増えたときに、先にどれだけお金が必要になるのか

によって、必要な資金は大きく変わります。

この記事では、「運転資金はいくら必要なのか」を考えるときに、経営者が確認しておきたいポイントを税理士の視点から分かりやすく解説します。


そもそも「運転資金」とは?

運転資金とは、簡単にいうと、会社が日々の事業を続けていくために必要となる資金のことです。

例えば、

  • 商品を仕入れる

  • 材料を購入する

  • 外注費を支払う

  • 従業員に給料を支払う

  • 家賃を支払う

  • 水道光熱費を支払う

といった支払いには、お金が必要です。

一方で、売上を計上しても、その場ですぐに入金されるとは限りません。

例えば、

4月に1,000万円売上
↓
5月・6月に仕入や人件費を支払う
↓
6月末に売上代金が入金

という会社なら、売上代金が入ってくるまでの間、会社が支払いを続けるためのお金が必要になります。

これが運転資金を考えるうえで重要なポイントです。


「運転資金は月商3か月分」は本当?

「運転資金は月商3か月分必要」

という話を聞いたことがある経営者もいるかもしれません。

これは一つの目安として考えることはできます。

しかし、すべての会社に月商3か月分の運転資金が必要というわけではありません。

例えば、月商1,000万円でも、

A社

  • 売上はほぼ現金で回収

  • 在庫が少ない

  • 固定費が小さい

という会社と、

B社

  • 売上の入金は2か月後

  • 材料費・外注費を先に支払う

  • 在庫を多く持っている

  • 人件費も大きい

という会社では、必要となる資金が違います。

だからこそ、「月商はいくらか」だけではなく、「お金がいつ入って、いつ出ていくのか」を見る必要があります。


なぜ月商だけでは運転資金を判断できないのか?

大きく3つの理由があります。

① 売上の「入金時期」が会社によって違う

例えば、月商1,000万円の会社でも、

  • 売上の翌日に入金される

  • 翌月末に入金される

  • 2か月後に入金される

では、必要な資金が変わります。

特に建設業や製造業などでは、売上が計上されてから入金されるまでに時間がかかることがあります。

その間にも、

  • 材料費

  • 外注費

  • 人件費

  • その他経費

の支払いは発生します。

つまり、売上が増えているのに、資金繰りが苦しくなるということもあります。


② 売上が増えるほど「増加運転資金」が必要になることがある

これは、成長している会社ほど注意してほしいポイントです。

例えば、今まで月商500万円だった会社が、月商500万円 → 1,000万円まで売上を伸ばしたとします。

「売上が2倍になったのだから、会社のお金も増えるはず」と思うかもしれません。

ところが、売上が増えると、

  • 仕入

  • 外注費

  • 材料費

  • 人件費

  • 運送費

なども増えていきます。

しかも、これらの支払いが売上代金の入金より先に発生する場合があります。

その結果、

売上は増えている
↓
利益も出ている
↓
でも口座のお金が減っている

ということが起こります。

これは「売上が増えたから安心」とは限らない理由の一つです。


③ 借入金の返済も資金繰りに影響する

もう一つ忘れてはいけないのが、借入金の返済です。

借入金の元本返済は、通常、損益計算書上の経費にはなりません。

しかし、会社の預金からは実際にお金が出ていきます。

例えば、年間利益500万円でも、年間の借入金元本返済額が600万円なら、利益だけでは返済額を賄えません。

このように、「利益が出ているか」と「借入金返済後に現金が増えるか」は別に考える必要があります。

運転資金を考えるときも、現在の借入金と返済額を確認しておくことが重要です。


自社に必要な運転資金を考える方法

財務上の「所要運転資金」を確認する場合には、一般的に次のような計算をします。

所要運転資金= 売上債権 + 棚卸資産 - 仕入債務

例えば、

  • 売掛金:2,000万円

  • 在庫:500万円

  • 買掛金:1,000万円

なら、2,000万円 + 500万円 - 1,000万円= 1,500万円となります。

これは、事業を回す過程で資金がどの程度固定化されているのかを把握するための重要な指標です。

ただし、この1,500万円をそのまま「銀行口座に置いておくべき金額」と考えるわけではありません。

実際に必要な手元資金を考えるときには、さらに、

  • 毎月の固定費

  • 借入金返済

  • 納税

  • 賞与

  • 設備投資

  • 今後の売上

  • 入金・支払条件

などを確認する必要があります。


経営者が本当に知りたいのは「運転資金」より「いつお金が足りなくなるか」

ここが、実際の経営では非常に重要です。

例えば現在の現預金:1,500万円だったとします。

これだけを見ると「十分ありそう」に見えます。

しかし、資金繰り表を作ってみると、

時点

現預金残高

現在

1,500万円

1か月後

1,200万円

2か月後

900万円

3か月後

600万円

4か月後

300万円

5か月後

-100万円

となっていたらどうでしょうか。

今は問題なくても、5か月後には資金が不足する可能性があります。

この場合、5か月後になってから銀行に相談するのではなく、今の段階で、「なぜ資金が減っていくのか」「いくら必要なのか」「融資が必要なのか」を検討することができます。

だからこそ、運転資金を考えるときは、「いくら必要か」だけではなく「いつ必要になるのか」まで見ることが大切です。


運転資金が不足しそうなとき、何をすればいい?

資金が不足しそうだからといって、すぐに「銀行から借りる」という結論にする必要はありません。

まず、

① 売掛金の回収状況を確認する

予定どおり入金されるのか確認します。

② 在庫が増えすぎていないか確認する

売れていない商品や材料に資金が固定化されていないか確認します。

③ 支払条件を確認する

仕入先や外注先への支払い条件を確認します。

④ 大きな支出を確認する

設備投資、採用、賞与、納税など、今後まとまった支出がないか確認します。

⑤ 借入金の返済額を確認する

毎月・年間でいくら返済しているのか確認します。

⑥ それでも不足するなら融資を検討する

必要額と資金使途を整理したうえで、金融機関への相談を検討します。

この順番で考えることが大切です。


融資を受けるなら「お金がなくなる前」に相談する

運転資金が足りなくなってから融資を申し込むより、「いつ資金が不足する可能性があるのか」を早めに把握しておく方が、経営者にとって選択肢を持ちやすくなります。

例えば、「3か月後に資金が不足する可能性がある」と分かっていれば、

  • 売上回収の確認

  • 支出の見直し

  • 設備投資時期の調整

  • 運転資金の借入

などを早めに検討できます。

金融機関に相談するときも、「お金がありません。貸してください」ではなく「売上増加に伴って、○月から運転資金が必要になります。現在の受注状況と入金予定から○○万円が必要で、今後の返済はこのように考えています。」と説明できる方が、資金使途や返済計画を金融機関に伝えやすくなります。


運転資金を考えるなら「資金繰り表」を作る

運転資金について考えるとき、非常に役立つのが資金繰り表です。

資金繰り表では、

  • 現在の現預金

  • 売上入金

  • 仕入・外注費

  • 人件費

  • その他経費

  • 借入金

  • 借入金返済

  • 税金

  • 設備投資

などを整理します。

そして、「数か月後の現預金残高がどうなるのか」を予測します。

過去の決算書を見るだけでは分からない、「これから会社のお金がどうなるのか」を確認できることが、資金繰り表の大きなメリットです。


まとめ|運転資金は「月商○か月分」だけでは決められない

運転資金について、「月商3か月分必要」という目安だけで判断するのはおすすめできません。

重要なのは、

① 売上がいつ入金されるか

② 仕入・外注費などをいつ支払うか

③ 在庫にいくら資金が固定化されているか

④ 毎月の固定費はいくらか

⑤ 借入金をいくら返済しているか

⑥ 今後、大きな支出が予定されているか

です。

そして最も重要なのは、「今いくら必要なのか」だけではなく、「いつ、いくら必要になるのか」を把握することです。

売上が増えている会社ほど、増加運転資金によって資金繰りが苦しくなることがあります。

だからこそ、資金が足りなくなってから対策するのではなく、資金が不足する前に資金繰りを確認しておくことが大切です。


高松市・三木町・さぬき市で運転資金・資金繰りについて相談できる税理士をお探しの方へ

谷口亮輔税理士事務所では、決算書を作成して税金を計算するだけではなく、会社の数字と資金繰りを経営判断に使える形に整理することを大切にしています。

例えば、

  • 「売上は増えているのにお金が残らない」

  • 「運転資金がいくら必要なのか分からない」

  • 「設備投資をしても大丈夫なのか知りたい」

  • 「従業員を採用しても資金が足りるのか確認したい」

  • 「融資を受けた方がいいのか迷っている」

  • 「銀行に融資を相談する前に数字を整理したい」

といったご相談にも対応しています。

必要に応じて、

月次試算表の確認 → 資金繰り表の作成 → 今後の資金予測 → 必要資金の整理 → 融資に必要な資料の準備

まで、一緒に整理します。

「資金が足りなくなってから」ではなく、「まだ余裕があるうちに」。

資金繰りについて不安がある経営者の方は、一度現在の数字を整理してみてください。

高松市・三木町・さぬき市を中心に、香川県内の中小企業の経営者の方からのご相談に対応しています。

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